バラを育てるにあたって悩みの多いのが消毒です。
私達も山梨県の3ヶ所で管理・生産をしていますが発生する病気や害虫の
タイミングは全て違います。
新苗・大苗を生産している白州町は標高が約700mで夏の終わりにもベト病が発生することがあります。山林が多いのであまりバラを食べるイメージのないナナフシに食害を受ける場合があります。
直営店の「ロザヴェール」は釜無川に近く、夕方に年間通して風が吹き黒点病は少なめです。
鉢生産をしている笛吹市では周りが葡萄園なので葡萄の出荷後、葉を維持するくらいの消毒になると害虫が多く寄り付きます。
同じ山梨県内でもこれだけ差があります。
バラの生産者としては効果のある消毒を皆様にご提案したいのですが、
気温はもちろん天気、地域、施肥、潅水など様々な要素で変わってきます。
適切に防除するには病気の性質を知る必要があります。
農場で対策している散布の仕方をご紹介します。
芽出しの時期の少し前、芽が「ぷくっ」と膨らんだ時に行う消毒が効果的です。
弊社ではオーソサイドを散布します。この時期は予防薬を中心に散布します。
月に4回散布するならば3回は予防薬です。治療薬は月に1~2回くらいです。
春の終わりや秋18~25度位が発病、進行する温度です。
品種による葉の厚さでも違うとは思いますがこの条件の時に葉が数時間濡れていると感染します。
黒点病は新しい葉は感染しません、葉が水をはじき停滞することがないからです。
農薬も大事ですが黒点病は葉面が濡れてないと感染しないのでこの時期にブラインドした枝や混んでいる所などの枝を整理してあげると風が通り、葉が乾きやすくなるので予防効果が高いです。
以前、国道の交通量の多い場所で栽培している方がほとんど農薬は使わないと言っていました。車からの風で雨後、他の場所よりも早く乾くそうです。
大きな樹の下などに鉢植えで置いてあるといつまでも雨だれで葉が乾かないことがあります。完全に雨を避けられたら問題ないのですがこのような場所は黒点病が多く発生します。
嘘のようですが雨後、バラを揺すって水滴を落とすだけでもかなり違います。
この時期は治療薬と予防薬を月に半分交代で行います。
発生が確認されたら治療薬を多く散布して下さい。
夏場は一時的に黒点病の発生は止まります。
上記で書いた繁殖温度を上回る日が多くなるからです。
ですがこの時期に管理をサボると秋に痛い目にあいます。
経験上、春の黒点は芽出しの時期、秋の黒点病は夏場に適切に対応しなかった結果です。
予防薬を中心に回数は少なくてもよいので油断しないで下さい。
ちなみに海外の育種家は耐病性を見るときに無農薬だけではなく無肥料で行います。
黒点病の感染には肥料の効き方も関係してきます。
肥料が切れて葉が薄くなってくると黒点病が侵入しやすくなります。
下葉でも肥料が効いて葉にツヤがあると病気の侵入を抑えられます。
多く与えるという意味ではないですが適切な量の肥料を切らす事なく効果的に与えて
おけば病気の侵入が少なくなります。
農薬だけではなく総合的に予防しましょう。
予防薬では
ジマンダイセン、オーソサイド、フルピカフロアブル、サンヨール、ダコニール、などになります。
治療薬では
サプロール、サルバトーレ、ラリー、トップジンM,などが治療薬とされています。
発生すると広がらないようにすることは治療薬で出来ますが、発病した葉の完治は難しいのが現状です。
ウドンコ病は黒点病と違い薬以外で予防する方法が少ないのが事実です。
胞子は風で運ばれてバラの新梢で発芽、繁殖します。
相性が悪い品種は必ずと言ってよいくらい出ます。
葉面の保護層の厚さによるものと考えられています。
消毒以外では下記の事に注意が必要です。
・肥料過多、日照不足、風通しが悪い、水の与えすぎでおこる株の軟弱化
・水切れによる保護層の傷み
いずれも葉面の保護層が薄くなった時に侵入されるものと考えられます。
新梢に付くのも予防しづらい要因です、成長期にはバラは1日に数センチ伸びます。
薬剤で覆っても膜が壊れてしまうからです。
健全に育て予防薬と治療薬をローテーションするという基本的な事でしか対応策がないのが現状です。
気温が18~25度位の時が多発時期です。
新梢は水をはじくので展着剤や乳剤などでしっかりと薬剤を留めなければなりません。
発病してしまったらウドンコ病は水が苦手なので冠水時にシャワーで発病部分をよく流す
ようにしてカビの層を薄くしてから消毒をたっぷりと流すように行って下さい。
代表的な治療薬は抗生物質のポリオキシン、2種類の違った成分が入ったパンチョTE粒水和剤、繁殖能力をなくさせるEBI系のトリフミン、サルバトーレ、炭酸水素カリウムで安全性の高いカリグリーン、鉱物微粉のモレスタンなどがあります。
予防はもちろん大事ですがウドンコ病は初期発見をして治療することがとても大切です。
殺虫剤・殺ダニ剤
もちろん予防も必要ですが虫が付いていなければ散布する必要がありません。
初期発見をして害虫の登録がある農薬を散布して下さい。
原始的ですが効果が高いのはアブラムや、ハダニなどは冠水時に葉に水をかけるシリンジを行い絶対数を減らしてから散布すると効果的です。
葉が濡れたままにすると黒点病の原因になりますので午前中に行って下さい。
初期発見で見つけにくいカミキリなどは種類にもよりますが6~10月位が産卵時期です。この頃に株元に撒くオルトランなどを月に一度与えるのが効果的です。
幼虫で越冬するので冬季にも一度株元に撒いて下さい。
コガネムシの幼虫も同様に対策出来ます。
効果的な防除は薬剤散布の基本通りに系統の違う物を散布して下さい。
農薬名 | 有効成分 | 適用害虫名 | 農薬系統名 | ||||||
ケ ム シ 類 |
ア ザ ミ ウ マ 類 |
ア ブ ラ ム シ 類 |
ハ モ グ リ バ エ 類 |
コ ナ ジ ラ ミ 類 |
ハ ダ ニ 類 |
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アクテリック乳剤 | ピリミホスメチル | ○ | ○ | 有機リン | |||||
スミチオン乳剤 | MEP | ○ | 有機リン | ||||||
スプラサイド乳剤・水和剤 | DMTP | ○ | 有機リン | ||||||
オルトラン水和剤・粒剤 | アセファート | ○ | ○ | ○ | 有機リン | ||||
マラソン乳剤 | マラソン | ○ | ○ | 有機リン | |||||
テルスターフロアブル・水和剤 | ビフェントリン | ○ | 合成ピレロイド | ||||||
マブリック水和剤 | フルバリネート | ○ | ○ | 合成ピレロイド | |||||
ベニカS乳剤 | ペルメトリン | ○ | 合成ピレロイド | ||||||
ベニカ水和剤 | クロチアニジン | ○ | ○ | ネオニコチノイド | |||||
ダントツ水溶剤・粒剤 | クロチアニジン | ○ | ○ | ネオニコチノイド | |||||
ベストガード水和剤 | ニテンピラム | ○ | ○ | ネオニコチノイド | |||||
カスケード乳剤 | フルフェノクスロン | ○ | ○ | IGR | |||||
アファーム乳剤 | エマメクチン安息香酸塩 | ○ | ○ | ○ | 呼吸酸素阻害 | ||||
ダニトロンフロアブル | フェンピロキシメート | ○ | ピラゾール系 | ||||||
ピラニカEW | デブフェンピラド | ○ | ピラゾール系 | ||||||
コロマイト水和剤 | ミルベメクチン | ○ | マクロライド | ||||||
ニッソラン水和剤 | ヘキシチアゾクス | ○ | ヘキシチアゾクス | ||||||
ダニサラバフロアブル | シフルメトフェン | ○ | シフルメトフェン | ||||||
バロックフロアブル | エトキサゾール | ○ | エトキサゾール | ||||||
ダニ太郎 | ビフェナゼート | ○ | ビフェナゼート | ||||||
マイトコーネフロアブル | ビフェナゼート | ○ | ビフェナゼート |
農薬名 | 有効成分 | 適用病害虫名 | 農薬系統名 | 効果 | ||||||
黒 星 病 |
う ど ん こ 病 |
ベ ト 病 |
灰 色 か び 病 |
炭 疽 病 |
さ び 病 |
ハ ダ ニ |
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ジマンダイセン水和剤 | マンゼブ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 有機硫黄 | 予防 | ||
エムダイファー水和剤 | マンネブ | ○ | ○ | ○ | ○ | 有機硫黄 | 予防 | |||
トップジンM水和剤 | チオファメートメチル | ○ | ベンゾイミダゾール系 | 治療 | ||||||
ベンレート水和剤 | ベノミル | ○ | ○ | ベンゾイミダゾール系 | 治療 | |||||
サプロール乳剤 | トリホリン | ○ | ○ | EBI | 治療 | |||||
アンビルフロアブル | ヘキサコナゾール | ○ | EBI | 治療 | ||||||
サルバトーレME | テトラコナゾール | ○ | ○ | EBI | 治療 | |||||
ラリー乳剤 | ミクロブタニル | ○ | ○ | EBI | 治療 | |||||
トリフミン水和剤 | トリフルミゾール | ○ | EBI | 治療 | ||||||
ダコニール1000 | TPN | ○ | ○ | 有機塩素 | 予防 | |||||
オーソサイド水和剤80 | キャプタン 鉱物性微粉等 |
○ | 有機塩素 | 予防 | ||||||
フルピカフロアブル | メパニピリム | ○ | ○ | ○ | アニリノピリミジン系 | 予防 | ||||
ハッパ乳剤 | なたね油 | ○ | ○ | 物理的阻害 | 治療 | |||||
サンヨール | DBEDC | ○ | ○ | ○ | ○ | 有機銅剤 | 予防 | |||
ポリオキシンAL乳剤 | ポリオキシン複合体 | ○ | 抗生物質 | 治療 | ||||||
ポリオキシンAl水和剤・水溶剤 | ポリオキシン複合体 | ○ | 抗生物質 | 治療 | ||||||
パンチョTE顆粒水和剤 | ジエントフェンカルブ チオファネートメチル |
○ | 酸アミド系・EBI | 治療 | ||||||
モレスタン水和剤 | キノキサリン | ○ | キノキサリン系 | 治療 |
商品名 | 有効成分 | 適用害虫 | 適用病 | 有効成分別名 |
ベニカXスプレー | ペルメトリン / ミクロブタニル | アブラムシ類 / チュウレンジバチ / チャドクガ / タバココナジラミ類 | うどんこ病 / 黒星病 / 白さび病 / ごま色斑点病 | アディオン / ラリー |
ベニカXファインスプレー | クロチアニジン / フェンプロパトリン / メパニピリム | アブラムシ類 / コナジラミ類 / ハダニ類 / チュウレンジバチ / ハスモンヨトウ / カイガラムシ類 / コガネムシ類成虫 / 他 | うどんこ病 / 黒星病 / 灰色かび病 | ダントツ / ロディー / フルピカ |
ベニカJスプレー | クロチアニジン / フェンプロパトリン | ケムシ類 / イラガ類 / アブラムシ類 / コナジラミ類 / チュウレンジバチ / 他 | ダントツ / ロディー | |
ベニカマイルドスプレー | 還元澱粉糖化物 | アブラムシ類 / ハダニ類 / コナジラミ類 | うどんこ病 | |
GFモストップジンRスプレー | アセタミプリド / フェンプロパトリン / チオファネートメチル | アブラムシ類 / ハダニ類 / コナジラミ類 | うどんこ病 / 黒星病 / 他 | モスピラン / トップジンM |
サンヨール トレボンスプレー | DBEDC / エトフェンプロックス | アブラムシ類 / ハスモンヨトウ / 他 | うどんこ病 / 黒星病 / 灰色かび病 | サンヨール / トレボン |
GFオルトランC | アセファート / MEP / トリホリン | ケムシ類 / アザミウマ類 / アブラムシ類 | うどんこ病 / 黒星病 | オルトラン / スミチオン / サプロール |
園芸用キンチョールE | ペルメトリン | アブラムシ類 / カミキリムシ幼虫 | アディオン | |
ボルン | マシン油 | カイガラムシ類 | ||
カイガラムシエアゾール | クロチアニジン / フェンプロパトリン | カイガラムシ類 | ベニカ水和剤 / ダントツ / ロディー |
水量(L) | 500倍 | 800倍 | 1000倍 | 1500倍 | 2000倍 | 2500倍 | 3000倍 |
0.5 L | 1 | 0.6 | 0.5 | 0.3 | 0.25 | 0.2 | 0.15 |
1L | 2 | 1.2 | 1 | 0.6 | 0.5 | 0.4 | 0.3 |
2 L | 4 | 2.5 | 2 | 1.3 | 1 | 0.8 | 0.6 |
3L | 6 | 3.7 | 3 | 2 | 1.5 | 1.2 | 1 |
4 L | 8 | 5 | 4 | 2.6 | 2 | 1.6 | 1.3 |
5L | 10 | 6.2 | 5 | 3.3 | 2.5 | 2 | 1.6 |
6 L | 12 | 7.5 | 6 | 4 | 3 | 2.4 | 2 |
7L | 14 | 8.7 | 7 | 4.6 | 3.5 | 2.8 | 2.3 |
8 L | 16 | 10 | 8 | 5.3 | 4 | 3.2 | 2.6 |
9L | 18 | 11.2 | 9 | 6 | 4.5 | 3.6 | 3 |
10 L | 20 | 12.5 | 10 | 6.6 | 5 | 4 | 3.3 |